*daisystar*

雑記帳

奥野さんソロイベ感想

 先週末のことですが、奥野香耶さんのFCソロイベントで盛岡まで行ってきました。


 すごく構成と演出が練られていて感心したので、備忘録的に書いておきます。
 なお、だいぶあやふやな記憶を頼りに書いていますし、適当に要約もしているので、間違や思い違いは多分にあります。

 

 ちなみにこのFCソロイベ、それぞれのWUGメンバープロデュースということで、基本に歌があってそれにプラスアルファでメンバーの個性で色々なことをやるっていう構成になっています。今回は東北の各県でそれぞれのメンバーが公演を行うという趣旨で、奥野さんは地元の岩手で開催されました。
 これまでソロイベは4回開催されていて(初回だけソロCDの抽選で、以降はFCイベ)、私は今のところ奥野さんの公演だけは毎年参加しています。
いやあ、新潟から盛岡まで特急と新幹線乗り継いで片道約5時間半大変でしたね……。でも行った甲斐がありましたよ。

 

■昼公演
 開演すると今回のイベントのシステムの説明があり、スクリーンに映し出されるセリフを観客が読む(たまにアドリブも求められる)ことで舞台と会話するように進める応援上映というか疑似ギャルゲーシステム。
 これは去年のソロイベントでもやったのでそれを観ているひとは一瞬で概要を把握できます。
 そしてさりげなく今回の奥野さんの役所がカタカナ表記の「カヤ」であることも知らされます。
 この『カヤ』というのは奥野香耶さんの持ちキャラで、奥野さんのようで奥野さんでないような感じの、人見知りが激しくて壁と話すのが好きだったり、独占欲が強かったり、愛情が重かったりする子なのです。去年のソロイベに登場したのですが、それ以外にもイベントとか配信で「このシュチュエーションでアドリブでセリフを言ってください」みたいな場面で時々ひょいと顔を見せるファンにはなじみのあるキャラだったりします。

 

 最初は普通にイベントの意気込みみたいな映像とかから始まって、声優になったカヤが地元で初めてのソロイベントをやるので、家族や友達も観に来て欲しい。そして高校時代に好きだった先輩(=観客)にも来て欲しいと久しぶりにLINEをするという流れ。
もちろん先輩は行きますと返答。っていうか既に会場に来ているので(笑) そしたらカヤは先輩を見つけたら合図するからどんなのがいいですか?と。客席の声を拾って投げキッスに決定。
 その流れでライブが始まって、5曲ほど歌って途中で先輩見つけて(カメラに向けて)投げキッス。この時点では普通に奥野香耶のソロイベ的な気分で観ているのですが既に術中にはまっている我々。

 歌が終わってあっさりイベント終了のアナウンスが流れて、折角遠征してきたのにちょっと短いかなーと思いながらも、客席の灯りは暗いまま。おやっと思ったところでカヤが登場して、ライブ終わった後に会えませんかと連絡してきます。赤煉瓦の銀行前で待ち合わせて、告白して晴れて二人は付き合うことに。
最後に今の気持ちということで中島愛さんのShining Onをカバー。ちなみに今回のイベント用に作られた奥野さんのソロ曲を重永亮介さんが作曲した繋がりで客入れの音楽も中島愛さんだったりします。まあ奥野さんのソロイベといえばマクロスFなので、ごくごく自然な流れですね。
 そしてスクリーンには「前編終了」の文字が流れて今度こそ昼公演終了。

 

 ……ん? 前編??

 

 かやたんと恋人♡やったー!!となるのは良いファン。
 しかし、よく訓練された我々はこう考えるのです「おかしい。『カヤ』が出てきているのに闇が薄すぎる。夏の強い陽射しには濃い影ができるのが自然なのに。不穏だ……」と。

 

 そうは言ってもまあ後編の夜公演まで少し時間があるし、会場近くにホテルを取ったのでしばし休憩。そしたら恋人になったばかりのカヤから♡なメッセージが! 内容については行った人のお楽しみということで公開を禁止されているし、そうでなくてもカヤからのプライベートはメッセージを晒す気なんてありません。とにかくさっきまでの不穏さなんて吹き飛ばす内容で、無条件にぼくはカヤのこいびとなんだ!!(ぐるぐる目)ってなりました。

 

■夜公演
 さて後編です。
 二人のデート映像が流れ、既に恋人状態で始まります。この時間が永遠に続けばいいのに……。
 でも先輩はオタクなので、付き合ってるくせにカヤのイベント会場に足を運びます。こいつ(自分)ダメなヤツだー!
 カヤは当然の反応として、先輩は声優としての自分と素の自分のどっちが好きなんだろうと考えます。声優のカヤは綺麗なところだけを集めた存在で、本当の自分はそうじゃないことも分かっている。でも恋人の先輩にはそんな自分も丸ごと受けとめてほしい。作られた声優カヤに負けたくないと。
 だからもうイベントには来ないで欲しいとお願いし、先輩は承諾します。脳内ではヤバイ警報がガンガン鳴り響いていますがどうにもならない。

 

 ——約束、守れるわけないじゃん。だって先輩(=観客の自分)はイベント会場に居るという事象は変えられないもの。変えるためにはこの会場から出なくてはならず、そうしたらカヤとの物語は続かなくなるのだから。
 そう。気付けばいつの間にか奥野香耶さんのソロイベントを観ている私という現実が、カヤと先輩の物語に置き換わっているのです。ライブで歌っているのはカヤで、そのカヤがWUGやハナヤマタのキャラソンを歌っている。それを観ている自分の視点は、恋人である先輩のものであると。

 

 これって、去年も同じ流れのシーンがあって、カヤとの約束を破って香耶イベント会場にいって、会場から出ると鉢合わせっていう修羅場。イベントに行くと必ずカヤを裏切ることになるという変えられない因果になってるのが重いです。しかも今回は香耶の存在が消されて完全にカヤと先輩の物語。

 

 さらに、カヤがステージから先輩を見つけてしまうことは昼の公演で示されているから、逃げ場はもうどこにもなくて。昼公演の時点で既に仕込みが済んでいることに気付いたときと絶望が現場に居なかった貴様には分かるか!!
 どうにもならないままライブが始まり、カヤは先輩を見つける。

 それでも先輩は過ちを認めてカヤも許してくれて、もう二度としないと約束するけれど、その現場を運悪く○春に押さえられスクープされてしまいます。

 それがきっかけでしばらく会わないようにするのと同時に、カヤは幸いにもスクープのおかげで名前が知られたことで仕事が忙しくなって、お互いに会いたい想いだけが募って一ヶ月の時間が過ぎていき……。

 そしてカヤは今度のソロイベントが終わったら自分から会いに行こうと決意して、だけどその想いは秘めたまま先輩にLINEを送る。そのソロイベントの会場はもちろん……。


 カヤからのLINEを受け取った先輩は、オタク独自のご都合主義思考でカヤは自分に合いたがっている!となり、ソロイベ会場に行くことにします。ホントこの思考の展開が生々しいというか、こういう自分に都合の良い解釈で考えるオタクいるいるって感じでやたらリアルなのが辛い。

 もちろんカヤは先輩を見つけるわけですが、やっぱり先輩は声優のカヤが好きだったんだ、作られた私に負けちゃったとひとり嘆きます。カバー曲は中島愛の『CALL ME』。先輩がここにいないはずという前提で決められたセットリストで、カヤの気持ちを裏切ってこの場所にいる先輩として聴く「ここにいてほしいのに」という歌詞。
 つらい。

 

 そしてイベント後に、カヤが「家に帰るまでがイベントですよ、無事にかえれたらいいですね」と言ってメールを送信。

 

 公演終了のアナウンスと共に照明が付いて夜公演終了。
 ぽかーんとしてなかなか動かない客。数度のアナウンスでようやく釈然としないまま会場を出て行く。
 昼公演ではアナウンス後にカヤが出てきて物語が続くっていうのをやっておきながら、夜ではその流れをあえて繰り返さないという演出。巧みだけどよくこれ実行しようって思ったなあ。

 

 先輩が家に帰り着いたであろう23時過ぎにカヤからメールが届いて本当にイベントの終了。どんな内容かはもちろんカヤと先輩だけの秘密です。
慣用句的に家に帰るまでがイベントですと言う人は今まで何人もいたけれど、意図的に観客の気持ちを宙に浮かせたまま会場から追い出して、家に着いてからお話を終わらせるというのは初めての経験でした。

 

 そして、土曜日はWUGのメンバーブログで奥野さんが担当の曜日なのですが、イベント終了直後の更新ではあえて内容に触れなかったというのも自覚的で素晴らしかったです。

 

■後から振り返って
 今回のソロイベ、普通のライブだったらやろうと思ってもなかなかできないことを、ファンクラブイベントという特性を最大限に活かしているなあと思いました。

 まず、昼夜公演を前編後編に分けるとという手法。大半の人が昼or夜しか観られないとい情況なら成立しません。この辺は会場キャパに対してどれくらい申し込みがあるかによるので、難しいところもあるのですが、WUGのFCは推しメンを一人指定できて、今回のイベントは推しメンを考慮すると予めアナウンスされています。
 申し込みの状況がどれくらいだったかは外から知りようもないのですが、奥野さん昼夜だけ申し込んでいた自分はどちらも当選でしたので、まあ昼夜観たいって人は観られる情況だったと思います。二次募集も受け付けてましたし。
 FCであれば、どの会員がどの公演を観るか確実に把握できているので、このシナリオにGoを出して大丈夫かの判断を付けられます。
 そしてイベント後に受け取るメッセージ。確実にメールアドレスを登録しているファンクラブだからできた芸当ですね。まあ近頃はチケット取るのにメアド不要って所は無いにしても、システム的な敷居はあって、公演参加者のアドレスだけ抽出して送信ってのは難しいとおもいます。


 それにしても、カヤというキャラクターがどこまで奥野香耶を反映しているのかというのは興味深い疑問です。
 例えば仮にカヤ=奥野香耶だったとしたら、このシナリオで描かれるカヤの「声優としての虚構の自分/声優でない素の自分」の二面性ですら奥野さんにとっては虚構の一部となるわけで、裏の裏は表か裏かみたいに入り組んでしまいます。それにしても声優の姿がそもそも虚構ってさらっと真実を述べちゃうも凄いですよねえ。それって当たり前のことだけど、当たり前と受けとめてないお客さんが多い業界なのに。
 いやまあカヤというキャラクターを演じているにしても、奥野香耶のソロイベを観に来ている人に、あからさまにキャラを作っていると見せるのではなく自然とカヤにスライドさせていったのには舌を巻きました。


 おそらくシナリオは去年と同じく雨野智晴さんだと思うのですが、去年よりもぐっと現実のイベントを体験する人の視点を上手く捕らえてて、こうやって演出に落とし込むのかという技術的なところがよく練られていると感心しました。 

 

 ほんと面白いものを観せていただきました。